皆さんは、「金の亡者!」と面罵されたことがありますか?
ワタシはあります。
心の中で感じていても、本人にはまず直接言わないはずのこんな激しい言葉を投げつけてきたのは、当時の職場の部下でした。15年ほど前、とあるワイン関連企業の番頭として、経営をまかされていた頃です。
別にワタシは、『ヴェニスの商人』のシャイロックではないので、かなり傷つきました。
が、今になってはある意味、褒め言葉でもあるなあと思ったりします。というのも、雇われ番頭としてのワタシに当時期待されていた役割とは、株主の利益を最大化することでして、そのためにガリガリ日夜働いていたからです。実際、めちゃくちゃ叩き出してました、利益。「金の亡者」呼ばわりは、職責を十分に果たしていたことの現れでしょう。いっぽう、今のワタシも、自分の小さな会社を経営する立場ですが、世間から見捨てられ、誰からも何も期待されておらず、別の株主も従業員もいないので、お金には頓着していません。「あー、キャッシュが足りないなああ。また借りるかああ。ああメンドくさい」みたいな、貧乏父さんぶりここに極まれりな放漫経営で、グウタラ&ノラクラにやっています。なんのハナシだよ、な感じですが、ここでご紹介したいのが、ナパの名門家族所有ワイナリーであるトレフェッセンで、CEOとして経営をまかされている人物、ジョン・ルエル -Jon Ruel-です。ふつう、ナパのワイナリーのCEOとか社長とかいうポジションは、MBAギラギラな感じのビジネス系パワーエリートによって占められているのですが、この人、農学・生態学・植物生理学なんかをがっつり勉強したあと、ブドウ栽培家になり、そして経営者になったという変わり種。
トレフェッセンに来たのは2004年、はじめはもちろん栽培責任者としての採用だったのですが、同名のオーナー親子に請われ、ワイナリー運営全般を見るようになりました。ジャスト・アナザー輸入元資料+アルファ
ここで取り急ぎ、トレフェッセンがどんなワイナリーなのかご紹介しときましょう。
はい、お馴染みの輸入元資料ですね。
GOOGLEで全文検索にかけると、きっと200ぐらいのワインショップがヒットするやつであります。いくつか補足をすると、ワイナリーが位置するのはナパ・ヴァレー南部、海に近くて冷涼な気候で知られるオーク・ノール地区で、ワイナリー周辺に400エーカーの自社畑を所有しています(このほか、マヤカマス山の斜面に40エーカーほどの畑も保有)。
自社畑産のぶどうしか、トレフェッセンでは使いません。これ重要ポイントです。その自分の畑に植えているのは9品種。
カベルネ・ソーヴィニヨンが主ですが、メルロ|カベルネ・フラン|プティ・ヴェルド|マルベックといったその他のボルドー系赤品種のほか、ピノ・ノワールも植えていますし、リースリング|シャルドネ|ソーヴィニヨン・ブランの3大白ブドウ品種もしっかり栽培しています。
日本にすべてが輸入されているわけではありませんが、それぞれ単一品種名を表示されたワインとして瓶詰めされています(カベルネ・ソーヴィニヨンや、マルベックを主体とした赤ブレンドのワインももちろんあります) これも大切ポイント。
あとはお味の方向性、スタイルですが、輸入元さんの資料にもあるように、どれを飲んでもとても典雅なのがトレフェッセンの特徴です。ナパだけど、「黒く濃く」ではないのです。
これは自社畑の涼しいテロワールの必然的な帰結ですが、オーナー家ならびにルエルの想いからくる主体的な選択でもあります。
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