オーセールとシャブリでワイン造りに情熱を注ぐ。グザヴィエ ジュリアンが手掛ける "農夫のワイン"。
ドメーヌ サン パンクラスは、グザヴィエ ジュリアンによって設立されたドメーヌです。ワイナリーは、シャブリから20kmほど離れたオーセールのコミューンのひとつ、ヴォ―(Vaux)に位置しています。グザヴィエは、ボーヌの醸造学校を卒業した後、マコネやシャブリのドメーヌで働いていましたが、「最初から最後まで自分だけで出来る仕事がしたい」と考え、故郷に戻りワイナリーを設立することにしました。1997年に最初の葡萄樹を植えて以来、26年にわたってワイン造りを行なっています。現在、コート ドーセールに4ha、シャブリに1.5ha、合計で5.5haの葡萄畑を所有しています。一部の畑は、森だったところを開墾して葡萄畑にしたそうです。彼の造るワインは、高級なブルゴーニュのイメージよりも素朴な、?農夫のワイン”ということが出来ます。フランスのワインガイド『ギド アシェット』誌では、2001年版から毎年のように掲載され続けており、国内での評価が非常に高いことがうかがえます。
フィロキセラ禍で失われた銘醸地 "コート ドーセール"
コート ドーセールの葡萄畑は、オーセールの南側、ヨンヌ川に近いエリアや、それに続く小さな谷の台地や丘陵地に広がっています(左地図の濃い緑色のエリア)。標高は120~280m、主に南向きで、南東から南西向きの畑もあります。下層土はジュラ紀後期(キンメリジャンとポートランディアン)と白亜紀前期(オーテリビアン)の石灰岩、粘土質そして泥灰・石灰岩の地層で構成されています。『ブルゴーニュワイン大全』には、ブルゴーニュ コート ドーセールについて次のように記載されています。「この地域はワイン造りの堂々たる歴史をもっており、詩にも、英仏王室の酒庫台帳の記録にも、頻繁に登場する。フランソワ1世とアンリ4世はオーセールのワインに特別な地位を与えている。フランソワ1世はフランス全土で販売できるように命じ、アンリ4世は税を免除したのである。イギリスではジョン王とヘンリー8世がこのワインを庇護した」。1787年には、オーセールの葡萄畑は1,800haを超えるほどだったとされていますが、フィロキセラ禍によって減少し、現在ではおよそ200haほどとなっています。ブルゴーニュにおいては、コート ドールのワインに注目が集まりがちですが、近年の価格高騰には凄まじいものがあります。そうした中でグザヴィエのワインは、まだ発見されていない、貴重なブルゴーニュ ワインのひとつといえます。
栽培について
コート ドーセールは、ブルゴーニュとはいえボーヌまでの距離は150kmほどと離れており、シャブリやサンセールの方が近く、土壌にも共通項があります。「コート ドーセールよりもシャブリの方が、ミネラル感が強い」とグザヴィエは話していました。栽植密度は1ヘクタール当たり10,000本という高密度です。ヴォ―(オーセール)の畑はチョークを多く含む痩せた土壌で、南南東を向いており、丸みがあり、若いうちから表現豊かで、また同時に長期熟成のポテンシャルを持つ力強いワインが生まれます。実際に現地を訪問してみると、もともとは森だったところを開墾した畑には、白い石灰岩がごろごろと転がっており、歩くのにも苦労するほどでした。グザヴィエは、「この畑で働くのがとても好きで、この景色を見ているといつもほっとします」と話してくれました。一方、シャブリの畑の土壌はジュラ紀後期のキンメリジャンで、若いうちは抑制が効いていますが、素晴らしくエレガントで、ミネラル豊かなワインが出来ます。
冬の間、葡萄は休眠していますが、畑では剪定作業が行われます。剪定は手のかかる仕事ですが、将来の葡萄の品質のために必要不可欠な作業です。ドメーヌ サン パンクラスではギヨー サンプルに仕立て、1本の木に6~8芽を残します。土壌の分析の結果によっては、オーガニックで認められた防除作業をすることもあります。春は枝の誘引、そして収量制限に不可欠な芽掻きの作業を行い、また同時に植え替えも行います。夏の間に伸びた枝の先端をカットし、葡萄の健康状態をモニタリングします。ベト病やウドンコ病はボルドー液で対策します。基本的に畑作業は一人で行いますが、収穫は12~13人の人を雇って、小さなチームで収穫しています。
醸造について
収穫は機械摘みと手摘みの両方です。クレマン用の葡萄は、規定に基づき100%手摘みで行います。シャブリとピノ ノワールの一部は手摘みです。近年のように暑い年は、早朝もしくは夜間に機械摘みをしています。これは、日中の暑い中、時間をかけて手摘みをするよりもベターだと考えているためです。収穫した葡萄は酸化を防ぐため、出来るだけ早くセラーに運びます。白は草っぽい味わいが出てしまうのを避け、ベストな果汁を得るため、空気圧プレスでゆっくりと圧搾します。アルコール発酵はヴィンテージによって異なりますが、数日から数週間かかることもあります。「自分が一代目なので金銭的に余裕がなく、タンクは全部中古で購入しています」とグザヴィエが話すように、発酵用のタンクはファイバー製やステンレス製など様々な種類のものが並べられていました。
赤ワイン用の葡萄はヴィンテージによって異なりますが、一部もしくは100%除梗した後、解放式の発酵槽に入れます。短時間のコールドマセラシオンを行った後、アルコール発酵を行います。発酵は野生酵母で行いますが、白ワインで発酵スピードが遅い場合にのみ、テロワールが持つ個性を隠さないよう、香りに影響のない酵母を入れることがあります。美しい色とタンニンを抽出するため、ルモンタージュを行います。アルコール発酵が終わったら、一部のワインを228Lのオーク樽に移して熟成させます。残りは同じタンクで熟成させます。ブルゴーニュでも北に位置する産地のため、樽熟成のみでワインを仕込むと樽が強くなりすぎてしまいます。そのため、タンクと樽のキュヴェのアッサンブラージュを大切にしています。
マロラクティック発酵は自然に任せています。ワインの持つアロマの質を保つため、フィルターは軽くかけるのみで、冷却による安定化はしません。その結果、ボトルの底には澱が見られますが、ワインの味わいに影響はありません。セラーで最低12ヶ月熟成させてからボトリングします。「どのキュヴェも造り方は同じなので、違いがあるとすれば、ヴィンテージの特徴がボトルの中に表現されているといえます」とグザヴィエは話します。輸入業者の資料より抜粋
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